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心の奥深くにあるものに語りかけてくる、そんな建築です。 英国の建築家ピーター・ソルター(Peter Salter)が <Walmer Yard,W11>という集合住宅をロンドンに完成させたようです。 以下のサイトにプロジェクトの詳細があります。 (写真は上記サイトのトップページのスクリーンショットです) ピーターは、私がロンドンのAAスクール(Architectural Association school of Architecture)に留学していた時の先生でもあります。ディプロマスクール(5年過程の4・5年生)の2年間、彼の下で学びました。プロセス/過程の大切さを身体で覚えこむことができたのも、彼のおかげです。そのかいあって私の卒業時の作品<Archive on Po delta>は、毎年数名の学生のみに与えられるAA Diploma Honour(AA優等学位)と、その年度の英国王立建築家協会シルバーメダル(最優秀学生賞)を得ることができました。 完成したピーター・ソルターの作品<Walmer Yard,W11>は、構想・設計・建設に10年以上がかけられています。何年か前に彼が京都工芸繊維大学でレクチャーをした際にも、このプロジェクトの説明がありました。(そのときの印象を綴った文章はこちらから)彼がその時話してくれた建築が、今まさに具体的な物質による空間となって現れたようです。 ピーターのプロジェクトのサイト、写真のページに、ドーム型をした部屋のインテリアを捉えたものがあります。 光は窓にかけられた銅の繊維でできたカーテンをとおしてドームのなかに入ってゆく。ドームの内側は暗い色で塗り込められ、光は深く静かにそこに吸収されていくようだ。その表面に埋め込まれた真鍮の目地は、光が入ってくる方向や角度、あるいは床面での反射の具合によって、時折どこか遠くで微かに鈍く煌く。思慮深い静かな室内は、微かな光の煌きと、銅のカーテンがもたらす光の綾によって、生命に満ちた外の世界と結合されてゆく・・・。 そんな物語をこの建築は語りはじめます。 肌に触れる感触、聞こえてくる音、空気の動きや匂い、人の心に直接働きかけるそれらの機微が、心の奥深くにあるものに語りかけてきます。そしてそれらを強く実感できる雰囲気が空間として生まれているのだと思います。もし<建築>がなにがしか<かけがえのないもの>を実現することができるとすれば、それは、人の心の奥深くにあるものに語りかけることができること、私は今はそのように考えています。 皆さんはどのように思いますか? 少なくとも私自身は、そのような存在に強く心動かされることを、ここに記しておきたいと思います。
by prospect-news
| 2017-03-02 20:49
| 随想
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