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先日のお天気が良い日に鎌倉を散歩する機会があり、 由比ガ浜の吉屋信子記念館を見学することができました。 記念館でいただいた資料には特にいつごろできた建物かという記述はなかったのですが、調べてみると、昭和37年(1962年)に建築家吉田五十八(参考ページ)が古い既存家屋を改修したもの、という記事をネットで見かけました。吉田五十八は近代的数寄屋建築としての多くの作品を残した建築家です。 あらためて写真を振り返ってみると、正面性がとても強く意識された空間であることがわかります。さまざまな面が重なり合って、豊かな奥行きを室内に生み出しています。そして実にすっきり、明晰でクリアーな空間という雰囲気があります。 既存建屋の改修ということですので、ディテイールの納め方などに、新旧をどのように関係付けていくかなどを思考した、そんな痕跡と見て取れる部分もあります。そういうことも含め、外部と内部、既存の部分と新しい部分、素朴な部分と研ぎ澄まされた部分、昔ながらのありかたと近代の精神、等々が重ねあわされているようです。 そのような視点を持って空間を捉えていくと、ところどころに少し奇妙な、奇妙というよりは興味深いというべきでしょうか、ディテールが幾つかあることに気がつきます。すごく控えめで何気なく・・・、でもよくみるとちょっと不思議な・・・、そんな材料の使い方や、形のつくり方や、物同士のつなぎかたがなされているのです。そんな部分に数寄屋建築のエッセンスがあるのかもしれません。 日本伝統家屋と明晰な近代性、それに数寄屋の感性が重なり合って、この空間として現れている、そういうことを実感として得ることができました。そしてそれが教条的でなく、堅苦しくもなく、普段のくらしのなかにさらっと見え隠れするように軽妙洒脱にデザインされている。なるほどこれが名人芸なのかも、そんな納得感がありました。 この6月中は土曜・日曜と見学可能なようです。 皆さんもお時間があれば是非いかがですか?
by prospect-news
| 2017-06-04 15:41
| 随想
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