あなたの「建築」が建ち現れることを目指しています。
四月のある朝、東側の高窓をあけたら、印象的な光と影が室内に現れました。そしてその時、私の中に「建築」が建ち現れたのです。
家は、私たちの日々の暮らしをさまざまに支え、そして包み込んでくれています。人が生きるための環境を整えてくれている、といっても良いのかもしれません。私たちはこのことをことさら意識することもありません。そんなありかたで存在するものを建築物といいかえることもできるでしょう。
しかし「建築」は、建築物とは異なるものだと私は考えています。
私はその時そこに、いつもの見慣れている室内とは別の風景を見ていました。さらにいえば、その風景の中に含まれていました。私は、そのような風景をつくりだす働きをもつもの「建築」を経験していたのです。
斜め上方からおりてくる白く輝く光、くっきりとした影。生き生きと息吹く空間。
具体的にどこかでみた建物を連想していたわけではなく、またそのような光と影のもとにある物語を思い出していたわけでもなく、だから、いまだ見ぬものではあるのだけれど、自分自身が親密な気持ちを抱くことができる、そんな空間が確かにそこにあったのです。
ふと気がつけば、先程の光と影はもうどこかへ行ってしまったようです。
しかし私の中には、確かにあったその「建築」の余韻が、残っています。
大事なことは、私の、そしてあなたの「建築」が、それぞれにあるということ。そしてそれこそが、人が建築物と関わるときに生まれるであろう大きな喜びのひとつだということ。そんな「建築」が現れる家や建築物をつくること。それが私たちが目指していることなのです。