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想像力の奥行と広がりを深める建築の姿です。 MLTWの最も知られている作品であるシーランチコンドミニアムは1966年頃につくられた。GA HOUSES 101号には、その中心事物の一人であるチャールズ・ムーアへの二川幸雄によるインタビューが掲載されている。(1973年に行われたものとのこと) 海を望むアルコーブなど、素敵な場所がたくさんあるこの建物だけど、特に興味を持つのは、荒々しいレッド・シダーの内部につくられている鮮やかな青い巨大な家具のようなもの。そのことについて、インタビューの中ではこのように語られていた。 “「シーランチ」の理念は我々の建築にとって非常に重要です。当時のカルフォルニアの住宅建築の理念は、建築の内部と外部をはっきりと区別しないで、出来れば内は外の延長として、また外は内の延長として考える方向にありましたが、私達は内部と外部を明確に区別し、内部の中にそのまた内部があり、内部に入れば入るほど外部とは異なった空間の効果をあげることを心がけました。コンドミニアムの内壁の荒いテクスチャーに対して、内部のオブジェ風の大きな家具をスムーズなテクスチャーにしたのもこの効果を増すためでした。 それと同時に、内部の要所々から水平線や、海岸線の岩肌や大波が見えるようにも心がけました。以前から考え続けて来た家の中心といえるエディキュラ(小神殿)や、家の中の家とも考えられる四本柱の空間のアイディアなども織り込んでみたかったのです。”(GA HOUSES 101号 2008年 p53) ほかの書籍に掲載されている同じ建物の内部写真では、海のような青ではなく、少し異なる塗装が施されているけれど、私自身はこの青い色が強く印象に残っている。窓の外の太平洋、そのリフレクションだろうか。 建物の中にもう一つ建物をつくるというのは、言い換えれば建物の奥行や深度をより深くするということでもあるだろう。それは物理的な奥行きを深めるだけにとどまらず、そこに住まう人の気持ちにとっての想像力の奥行と広がりを深めることでもある。そしてそれを経験するということが、建築を生きるということでもあるはず。 これが建築の豊かさなのかもしれない。 そんなことを改めて思う。写真はGA HOUSES 101号/2008年 p50-51より
by prospect-news
| 2019-06-25 09:24
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